

私たち日本人が英語を勉強してまず戸惑ってしまうのは、英語の名詞は「数」を意識するということでしょう。
例えば、「トムはペンをたくさん持っています」は英語ではどう言いますか?
日本語では1本であっても、10本であっても、「ペン」です。人間なら、「たくさんの人たち」と言うこともありますが、「たくさんの人」と言っても間違いではありませんよね。
しかし、「たくさんのペンたち」とはいいませんよね。
ここでは、英語の「複数形」と「単数形」の違い、日本語と英語の「数」に関するとらえ方の違いについて解説していきます。
複数形、数える?数えない?
冒頭文で、日本語では1本であっても、10本であっても、「ペン」です。人間なら、「たくさんの人たち」と言うこともありますが、「たくさんの人」と言っても間違いではありません。
しかし、「たくさんのペンたち」とは言わないと述べました。
一方、英語では「1つ」と「2つ以上」を厳密に区別し、「2つ以上」の時には複数形(普通は名詞の最後にsをつける)で表します。
「たくさんのペン」は当然2本以上ですので複数形を使います。
Tom has a lot of pens
トムはペンをたくさん持っています。
では、複数の物について言う時は、どんなときでも複数形を使うのでしょうか?
英語には、1つ、2つ、3つ、と数えることができ、2つ以上を言うときに複数形を使う名詞と、日本語のように数に関係なく同じ形で表す名詞があります。
それでは、どのようにして「数えられる名詞」「数えられない名詞」を区別するのでしょうか。
多くの辞書には、数えられる名詞は「C」数えられない名詞は「U」の記号が出ていますので、これを見れば簡単にわかりますが、まずは辞書を見ないで、下記の名詞がそれぞれ「数えられるか数えられないか」を考えてみてください。
pen「ペン」、dictionary「辞書」、car「車」、year「年」、nature「自然」、
love「愛」、glass「ガラス」、bread「パン」、money「お金」、water「水」、year「年」、season「季節」
日本語の感覚で考えると、どれも数えられそうに思えませんか?
carやpenはもちろん、natureやloveといった抽象的な名詞でも、「北海道にはたくさんの自然が残っている」「彼から愛をいっぱいもらった」など、日本語では数えられそうな気もします。
英語で「数えられるか」「数えられないか」の決め手になるのは、決まった「かたち」があるかどうかです。
物を数えるには、1つ1つの物の形がはっきりしている必要がありますので、具体的な物を表す名詞など、はっきりした輪郭のある物は、たいていが数えられる名詞です。
pen「ペン」、dictionary「辞書」、box「箱」、car「車」などがその例です。
具体的な物以外を表す名詞でも、数えられる名詞になることがあります。
例えば、meeting「会議」やlecture「講義」は、具体的な物とは言いにくいのですが、会議や講義の時間は「何時から何時まで」と決まっていて、その時間の範囲が輪郭と考えられるので、数えられる名詞になります。
同様に、year「年」、century「一世紀」、season「季節」なども形がはっきりしているわけではありませんが、1年は1月1日から12月31日まで、20世紀は1901年から2000年まで、春は通常3月から5月までといった範囲が輪郭と考えられるので、数えられる名詞になります。
英語と日本語の「数えられる」の違い
では、nature「自然」やlove「愛」などはどうでしょうか?
抽象的な概念には、具体的な形がありません。英語では、このような名詞は数えられない名詞になります。
同じように、glass「ガラス」、iron「鉄」といった素材を表す名詞も、一見形がありそうですが、熱を加えたり、切ったりすることでいろいろな形に変化しますので、決まった形があるとは言えず、全て数えられない名詞になります。
数えられない名詞には複数形がありません。そのため、「窓ガラスを何枚か割ってしまった」と言いたい場合、英語ではこうなります。
I broke some glass in the window.
日本語では明らかに数えられそうに思っても、英語では数えられない場合もあります。
例えば、money「お金」は小さい子供でも「1000円札が10枚」のように数えています。
英語でも、「お札」(bill)や「硬貨」(coin)は具体的なかたちがあり、数えられますが、これらをまとめた「お金」には形がありません。
そのため、英語ではmoneyは数えられない名詞になりますので、例えば、「父はお金をたくさん持っている」と言いたい場合はこうなります。
My father has a lot of money.
日本人にとって厄介なのは、見た目には形があるのに、英語では素材であるとみなされて、数えられない名詞になっている語です。paper「紙」、cheese「チーズ」、meat「肉」、stone「石」などは一見数えられそうですが、英語では数えられない名詞になります。
同じようなことは、water「水」、coffee「コーヒー」のような液体にも言えます。
日本語では「お水1杯」「コーヒー2杯」と数えることができますが、液体にははっきりした具体的な形がないので、英語では通常は数えられません。そのため「コーヒーを2杯飲んだ」と言いたい場合、I drank two coffees.のように言うことはできません。
もっとも、「コーヒー」は数えられなくても、「コーヒーカップ」には形があるので数えられます。そのため、「コーヒー2杯」という場合には、
Taro drank two cups of coffee at Starbucks.
タロウはスターバックスでコーヒーを2杯飲んだ。
のように液体であるコーヒーの代わりに、カップを数えます。
主語によって動詞の形も変わる
英語では、主語が「1つ(1人)」か、「2つ(2人)以上」かによって、その後で使われる動詞の形も変わってきます。次の文を見てください。
Tom is looking for the criminal.
トムは犯人を捜索しています。
Tom and John are looking for the criminal.
トムとジョンが犯人を捜索しています。
主語が自分や話している相手以外の1つ(1人)を表す場合には、be動詞は「is」を使いますが、主語が複数形の場合は、「are」を使います。
それでは、次の場合はどうでしょうか。
The police are looking for the criminal.
警察が犯人を捜索しています。
police「警察」は、形としては単数形のように見えるので、なぜ「are」が入るのかと考えた人もいると思いますが、実際には複数形の扱いをします。
英語の名詞の中には、1つ1つの小さなものをまとめて束ねることで「集団」や「まとまり」を表すものがあります。
これは集合名詞と呼ばれるものです。「police」の場合、たくさんの警察官や捜査員が「警察」という1つの組織の一員として動いているのですから、形は単数形でも複数形のように扱われます。
More than 1,000people were watching the basketball game.
1000人以上がバスケットボールの試合を観戦していた。
「people」も同様で、1人1人の人間が集まって「人々」「みんな」という「まとまり」を表しています。
試合を応援している観客は、人数が多くても一心同体になって、1つのチームを応援していると考えられるので、形は「people」という単数形のようですが、複数形の扱いをします。
数えられない名詞を数えるには
文法の世界では数えられない名詞であっても、日常生活の中では数えないといけない場面はたくさんあります。
次の文を見てください。
My living room has only three pieces of furniture. a sofa,a table,and a floor lamp.
私の居間には3つしか家具がありません。ソファーとテーブル、フロアスタンドです。
「家具が3つ」と言いたいのに、なぜ英語では「three furnitures」にならないのでしょうか?
英語ではfurniture「家具」は数えられない名詞であり、sofa「ソファー」、table「テーブル」、floor lamp「フロアスタンド」といった、さまざまな数えられる物をひとくくりにした単語です。
そのため、家具1つ1つを表す「sofa」や「table」などは数えられても、ひとまとめにした「furniture」を数えることはできません。
このような場合は、「piece(日本語の~つにあたります)」という数えられる名詞をつけて、「three pieces of furniture」のようにします。数えられない名詞である「furniture」は数えないで、数えられる名詞の「piece」を身代わりにして数えるということがポイントです。
「baggage(荷物)」なども同じです。
しかし、どんな名詞にでも‟a piece of”と言えるわけではありません。日本語で、荷物は1個、2個... チョークは1本、2本...と使い分けるように、英語でも名詞によっていろいろな言い方を使い分ける必要があります。
例えば、下記のような例があげられます。
a cup of coffee コーヒー1杯
a glass of water 水1杯
a jar of jam ジャム1瓶
a spoonful of sugar 砂糖1さじ
a sheet of paper 紙1枚
a slice of bread パン1枚
このように、cup「コーヒーカップ」やglass「コップ」、jar「瓶」、spoonful「スプーン1杯」といった入れ物や、sheet「紙」、slice「一片」といった形を表す数えられる名詞を身代わりにして数えることで、数えられない名詞を数えることができるようになります。
2つ以上を表す場合は、two cups of coffee「コーヒー2杯」、three jars of jam「瓶入りのジャム3つ」、four spoonfuls of sugar「砂糖4さじ」のようになります。
この例ではどうでしょうか、
These scissors are sharp.
このはさみは切れ味が良い。
「はさみ」「メガネ」などは、1つであっても、2つ以上であっても、必ず複数形で用い、動詞も複数扱いになるため、「are」が使われます。
はさみには必ず2枚の刃がついていますし、メガネにもレンズが2枚ついています。
このように、2つの物がペアになって、切っても切れない関係になっているような物は、たとえ1つの物であっても複数形を使います。
同じような例として、pants「ズボン」、shoes「靴」、gloves「手袋」といった手や足に関係する衣類や、scales「天びん」などの、2つの物が必ず1対で使われる語があります。
このような語を数える場合は、「a pair of」を使い、a pair of pants「ズボン1着」、two pairs of pants「ズボン2着」のように数えます。
1つでも、2つ以上でも常に複数形の形で使いますので、pant、scissor、gloveというような単数形はありません。
I bought a pair of scissors yesterday.
昨日、はさみを1つ買った。
I bought two pairs of scissors yesterday.
昨日、はさみを2つ買った。
最後に
英語では「1つ」と「2つ以上」を厳密に区別し、「2つ以上」の時には複数形で表します。
英語で「数えられるか」「数えられないか」の決め手になるのは、決まった「かたち」があるかどうかです。
日本語と少し違った概念もあり、日本人には判別しにくい言葉もありますが、日々、英語に接していけば、「慣れ」でこのような事は瞬時に判別できるようになってきます。
コツコツと「慣れ」を積み上げていきましょう。
今回は以上になります。