「助動詞とは何をするものですか」と聞くと、「動詞を助けるもの」という答えが返ってきます。助動詞は、動詞を「助ける」というより、ある意味「動詞の邪魔をしている」という理解もできます。
動詞の現在形が「事実を言い切って表す」のに対して、助動詞は、動詞が表す「事実」に「ぼかしフィルター」をかける役割を果たします。
その「ぼかしフィルター」には、話し手の「考え」が表されます。その助動詞の働きを見てみましょう。
助動詞は動詞を助けるもの!?
前述のように助動詞は動詞が表す「事実」に「ぼかしフィルター」をかける役割を果たし、話し手の「考え」が表されます。
He helps me.(彼は私を助けてくれる)
動詞のhelpが、事実を言い切って表しています。この動詞の現在形は「普遍的な事実」を表します。つまり、「彼はいつでも私を助けてくれる」、という普遍的事実を伝えるニュアンスです。
ここに、助動詞を加えてみましょう。
He will help me.
彼が助けてくれる、と私は考えている
He can help me.
彼は私を助けることができる、と思う。つまり、彼は私を助けてくれる可能性がある、と思う
He may help me.
彼が助けてくれる... かもしれない
助動詞will、can、mayが入ることによって、動詞が表す普遍的事実にフィルターがかかっていることがわかります。
そして表現がwill → can → mayと変わるにつれて、「動詞が表す事実が本当に起こるのか」が、徐々に弱く表されています。
つまり、「彼は私を助けてくれる」という普遍的事実に、話し手の「確信」「予測」が加わり、will → can → mayと変化するにつれて、その「確信」の度合いが下がっています。
このように、話し手の「考え」を伝えるのが助動詞の役割です。
助動詞が表す「考え」
助動詞が表す「考え」は、文脈によって伝える内容が変わります。
しかし、それぞれ漢字2文字で、代表的な助動詞can、may、will、must、shouldの意味を理解することが可能です。その基本の意味が文脈に応じて意味を広げ、様々な姿をみせます。
例えばcanであれば、「可能」→「能力・可能性・許可」というように、文脈に応じて意味が広がります。
can | 可能 | ~することが可能である
~が起こる可能性がある 意味の広がり:能力・可能性・許可 |
may | 許容 | ~してもかまわない
~であってもおかしくない 意味の広がり:許可・可能性 |
will | 意志 | 絶対に~する
~が間違いなく起こるだろうと思う 意味の広がり:意志未来・推定・習性 |
must | 必然 | 絶対に~しなければならない
~でなくてはおかしい 意味の広がり:義務・確信のある推定 |
should | 推奨 | ~したらよい
きっと~だろう 意味の広がり:必然に基づく推量・推奨 |
ここで注意したいことは、例えば「能力のcan」のつもりで助動詞canを使っても、それが「可能性」の意味と理解される、ということが起こることです。
「能力」も「可能性」も結局は同じことを言っていて、便宜上の定義づけとなりますが、「能力のcan」「可能性のcan」というように分けて考えてしまうと、誤ってしまう場合や、表したいニュアンスとは違うように理解されてしまう場合があるので注意が必要です。
例えば次の文で、確認しておきましょう。
He can help me.
彼は私を助けてくれる
彼の「能力」を表しているか、または起こりうる「可能性」を表しているか。いずれの解釈でも、この文が伝えている内容の本質は同じことです。
しかし、これを「能力のcanのつもり」、「可能性のcanのつもり」というように分けて考えてしまうと、混乱や誤りの原因となってしまいます。
助動詞が伝える「確信」と「義務」
「助動詞」の本質である、①助動詞は「考え」を伝える、②助動詞には核となる意味がある、を理解した上で、助動詞をどのように使えば良いのかについて説明します。
助動詞が表す「考え」は、「確信」または「義務」の文脈で使うことが多くなります。
したがって、助動詞を正しく使うためには、各助動詞のニュアンスを理解するとともに、各助動詞が表す「確信の強さ」と「義務の強さ」を正しく把握することが大切です。
<「確信の強さ(~だろう)」を伝える>
He must help me.
He will help me.
He should help me.
He can help me.
He may help me.
<確信の度合い>
must will should can may
強い ← → 弱い
must : 「当然そうだろう」という必然性に基づく確信として表します。
will : 「そうである」と信じて疑わない確信として表します。
should : mustと同様に、必然性に基づいた確信を伝えますが、確信の度合いはmustよりも弱くなる。
can : 可能性があるとして表します。
may : 起こるかどうかわからないこととして表します。
<「義務(~すべきである)」を伝える>
He must help her.
He should help her.
<課す義務>
must should
強い ← → 弱い
must : 強い義務。「そうすることが適切あるいは当然なのでそうするべき」という必要性や必然性に基づく義務を表します。
should : mustよりもずっと弱い義務を表します。「(道徳的、または状況から考えると)~であるのが正しい」ということを意味しています。義務の文脈では「~したほうがよい」といったニュアンスになります。
「have to」、「had better」との比較
「~するべき」を表すmustとよく比較される表現に、have to(~しなければならない)があります。また、「~したらよい」を表すshouldと比較される表現に、had better(~したほうがよい)があります。
例 ニュアンス
You must help her. 彼女を助けてあげなよ。
You have to help her. 彼女を助けないといけない。
You should help her. 彼女を助けてあげたら。
You had better help her. 彼女を助けてあげないと、困ったことになるよ。
have toは、「状況がそうさせる」という意味を持っています。
mustが「考えを表す」という助動詞の性質から、「そうすることが適切あるいは当然なのでそうするべき」といった、必要性や必然性に基づく義務を表す一方で、have toは、「状況から、そのようにしなければならない」という義務を表します。
つまり「You have to help her.」は、状況の必要性から「助けなくてはいけない」という意味になります。
have toの使用は、意図がずれないように注意する必要があります。
had betterは、「better=ベター」とあるように、何かと比べて「より良い」というように比較を使った表現です。
つまり、「そうしなかった場合に好ましくない結果になる」ということを示唆します。
「You should help her.」が、気持ちの上で「(道徳的、または状況から考えると)~であるのが正しい」ということに基づくのに対して、had betterは「他の選択肢よりもこちらを選択するべき」ということに基づく、より切迫した状況を表します。
また、had betterは、そのような切迫感から命令的な印象も与えるため、目上の人に対して使わないように注意が必要です。
今回は以上になります。