私たち日本人は英語で自分の名前の書き方を習う時、初めて姓と名を逆にすることを教わりますが、なぜそのようにするのかは実はあまり知らなかったりします。
今回は英語圏ではなぜ名前で呼び合うのか、日本ではどうなのか、いろいろな愛称などをさらっと解説していきます。
「first name」こそが自分の名前
私たち日本人は英語で自分の名前の書き方を習うとき、初めて姓と名を逆にすることを知りますが、なぜそうするのかについてはとくに疑問を持ちません。
欧米では親しい間柄ならfirst nameで呼び合うのが普通であり、Ms. Smithなどと呼ぶとよそよそしく感じられて、かえって失礼になることもあります。
first nameで呼び合う友人が自分に何人いるかによって、その人の生活がどの程度幸福なのかが決まったりします。「We are on first-name terms.(我々はファーストネームで呼び合う間柄だ)」と言えるのが、親しい友人になった証拠だったりします。
一般の欧米人にとってはfirst name(名)が大切なのであり、surname(姓)は必ずしも重要なものではないのです。
surnameは要するにグループ(家族)の名前にすぎず、自分自身の名前ではないと考えるのです。そして大事なことを先に言う文化であるから、first nameを先に出すのです。つまり、先に出すからこその「first name」なのです。
「first name」に当たる日本語は無い
イエ(家)制度を基礎に発達した日本の社会では、個人よりもイエ(集団)が重視されました。日本人にとっては名字がいちばん大切なものだったのです。
山田太郎さんにとっては、山田家の一員であるということが大切なのであり、太郎は山田家の中における識別のための名前にすぎないのです。
ですから、surname(family name, last name)には「姓」「名字」「苗字」などの言い方がありますが、「first name」に相当する日本語は正確にはありません。
「名前」という言葉は、必ずしもfirst nameを意味しません。だから英和辞典などではやむを得ず「ファーストネーム、名」などとされています。
英語ではfirst nameのほかに、personal name、 given name、 Christian nameなど、日本語の名字より多くの言い方があります。また、欧米人の名前にはもう一つ「middle name」なるものがあります。
このmiddle nameは頭文字、例:(F)だけで表すこともありますが、母方の名前を名乗ることも多いようです。また、先祖に有名人がいると、それを使うこともあるそうです。欧米人には同姓同名の人が多いので、区別するためにmiddle nameはできたようです。
「first name」から変化した「愛称」
欧米社会では、first nameは日常親しい人とのあいだで使うものだから、なるべく短くて言いやすい名前が良いので、nickname(愛称)ができているものが多いです。
例えば、
first nameが「Alexander」だったら、nick nameは「Alee」や「Alex」。「William」だったら「Will」や「Bill」。
女性は例えば、「Catherine」だったら「Cathy」や「Kate」、「Elizabeth」だったら「Bess」や「Betty」です。
愛称の中にはfirst nameとかなりかけ離れた呼び名もあって不思議に思われるでしょうが、これらは少しずつ音がなまって変化していったものです。
例えば、WilliamはWillから「w」の音が「b」に変わってBillとなったものであり、Elizabethは「Beth」→「Bess」→「Betty」と変化したものです。
ちなみに、アメリカの大統領も愛称で呼ばれたりしますが、選挙のときなど、この愛称の韻を踏んだスローガンなどがよく使われています。
例えば、第34代大統領のDwight David Eisenhowerの愛称は「Ike」ですが、スローガンは「I like Ike.(アイクが好き)」でした。第40代大統領のRonald Wilson Reaganと日本の中曽根康弘元首相は、‛Ron と Yasu’(ロン、ヤス関係)と呼ばれ親しい関係だったと言われています。
今回は以上になります。